|
「あら、あなた35才なの?うちでは診られないですね」 産科医院で冷たく診療拒否されてしまった妊婦の受難。先日、朝刊の「お産崩壊」という特集欄で読み悲しくなった。 〈リスクの高い35才以上の初産妊婦はお断りせざるを得ない〉が、その理由である。まさに、患者側と医療側の立場、意向が、真っ向から対立した事象である。 我われ患者は、ハイリスクであればあるほど、専門性の高い医師の手助けを必要とする。通常の出産では、昔はほとんどがそうであったように、お産婆さんの手を借りればなんとかこと足りていた。 だが、高リスク妊娠となればそうはいかない。産婦人科はもちろんのこと、時には小児科或いは麻酔科等が完備された総合病院であれば実に心強い。 現状、産婦人科医が高い訴訟率と昼夜ない過労勤務等で極悪の労働環境にあると伝えられている。こうした背景が如実に現われているのが、分娩を扱う病院数のジリ貧。 平成8年から10年間で、分娩取り扱い病院が、1720から1321施設と23%も減少した。30%以上も減少した県が9県もある。病院だけではない。分娩取り扱い診療所も、同期間で2271から1612施設へと約30%減少した。 このジリ貧減少は、ジッと手をこまねいていては、お産難民、お産崩壊がますます深みにはまりそうで考えるのも辛い。 更には、もともと「子どもが好きだから」と、新しい命の創生に夢を抱いていた医者の卵の進路にも悪影響が及んでいる。 ある医学部男子3年生の激白。 「一生懸命やっても、訴訟を起こされたり刑事裁判の被告になったりしたら人生が台なしになる」悲しいかな産婦人科に進むことをためらうのである。 そんな中、先程、脳性麻痺が無過失事故と雖も、公的に補償される道が開けた。まことにグッドタイミングなことで、今後も安心してお産ができるよう有効な施策が次々と打出されることを期待したい。 産科医減少をくい止めるには、まず現場の過労環境を改善することが第一。そして、次代を担う医学生の夢が、真に現実のものとなるよう関係者の地道な工夫が絶対不可欠である。
|