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「中年危機」という言葉がある。 40~50代という働き盛りは、何かと心の健康問題を抱えやすく、次第に窮地に追いつめられることが少なくない。それがついには自殺者全体の40%を中年が占めるという結果にもつながっている。 日本は、残念なことに先進国中最悪の自殺率を示しており、それを牽引しているのが、まさにこの中年世代なのである。 中年は、生産的に最大価値を有する年代であるだけに、その自殺による経済的損失は極めて大きく、年間5千億円にものぼると試算されている。遺される家族の心痛等の影響も考えると、軽く1兆円を越えるとも言われるのである。 自殺件数が多いという重い背景に、心の不安があるのは当然であり、その証拠に抗不安薬の処方件数はベラボウに多い。年間の処方延べ件数は12億にものぼり、全国民1人当たり年間10回も抗不安薬の処方を受けていることになる。 この実態は、欧米人の6倍にもなる異常さで、実は、この安易に抗不安薬を処方してしまうという診療行為が、自殺を増やす悪の根源だとする指摘がある。 抗不安薬を平均4年以上服用している人約12万人を対象とした大調査で、その約3割相当の人が実は抗うつ薬を処方されていなくてはいけなかった、というより高度な専門医による指摘がある。こんな実態を反映してか、実際にきっぱりと抗うつ薬に切り替えたところ、見違えるように元気になった、という症例が数多く報告されてもいる。 精神的に弱く、いつもダラダラクヨクヨやる気の沸かない、いわゆる精神安定剤盲心人間は、この際、信頼のおけるセカンドオピニオンなり精神神経科専門医の門をたたいてみたらどうだろうか。なかなか自分の症状改善にラチのあかないようなら不適切処方の疑いをもってもよいのではないか。適切なら全く新しい明るい世界が見えてくるかも。 スウェーデンは、かつてヨーロッパの中で最悪の自殺国と言われたことがあった。発奮した指導者は、医療者を総動員し、メンタル的に問題のある人間を掘り起こし、適正治療を決行。人口10万人対比25人の自殺者を10年間で20人に低減させることに成功した。 同じ薬を漫然と処方し続ける能なし医者のことを“コンサバティブ”(いい加減な)ドクターというそうである。 そうしたドクターの改善向上の為、医師会等には早期に適切な指導を実施して欲しいものである。最近は、新しい有力な抗うつ薬も次々に登場してきているし、早期発見、早期治療が実現できれば、スウェーデンの成功例もあることだし、先進国中最悪という自殺国家の汚名は返上できるはずである。
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