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医療機関毎に、心臓や癌等の手術件数を一覧表にしたものを、新聞でよく見かける。手術を多くこなしていれば、それだけ管理も手慣れて成功率が高くなる、というのだろう。 難手術「冠動脈バイパス術」について、件数と成績の関係が、今回、日本で初めて報告された。欧米と比べ、日本は少ない例数にもかかわらず好成績をあげ大変注目を浴びた。 それによると、年間件数が15件以下の施設では、死亡率が3・8%だったが、51件以上では1・6%にとどまった。年間40件以上あれば1%台で、ほぼ成績は安定するとしている。 そこで気になるのは、「施設」か「術者」かの問題である。年間15件以下の術者でも、所属施設が51件以上あれば死亡率は1%台にとどまり、一方で、術者が16件以上でも、施設が30件以下では2%台になることが判明。 術者単独の件数要素だけでは成績は比例せず、施設要素の方がより影響度の大きいことが明らかとなった。 北京オリンピックでは、世界新記録が連発した。たゆまぬ努力を積み重ねた選手サイドに、より明るいスポットライトが当てられて当然。だが、その影にコーチのほか、栄養管理をはじめ多くのスタッフの支えがあったことを忘れてはならない。 この手術成績では、選手個人よりむしろその裏方全体の働きの方が、より重要であることを示している。 その意味でメダル獲得者は、今回の好結果に慢心することなく、スタッフ共々真摯に次の高い目標に向けて頑張って欲しいものである。 手術成績については、患者の年齢別でも解析されており、65才以上の高齢者において、影響度がより顕著である、としている。つまり、高齢者としては、特に、より多くの手術をこなしている施設を選択すべき、ということである。 日本では、年間40、50件程度で死亡率1%台の安定した成績が得られているが、アメリカでは、150件以上でも2%台以上となっている。 この日本の好成績の背景として2点あげられている。1つは、術者が病院所属システム下で綿密な管理態勢がとれること。2つ目は、保険会社等の圧力がなく、最高水準の治療が提供できること、である。日本が世界に誇る医療保険制度はなんとしても維持していきたいものである。
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