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医師不足の要因の一つに、女性医師のあり方が大きくかかわっている。 医学部入学生の半数以上を女性が占める例もあったりして、毎年多くの女医が誕生しているが―その分男性医師の割合がせばめられる―結婚、出産を契機に、せっかく仕事に慣れ、立派に戦力化した医療現場からやむなく離れていく若手女医が大勢居る。 社会的にも大きな損失であるとの指摘が当然ある。 その後、育児環境等が一段落して、復職プログラムや再教育システムが組まれたりしているが、はっきり言って十分機能しているとは言えない。 そんな中、超高齢社会を背景として、女医活用の新しい道作りの期待が急浮上してきた。 プライマリケアや家庭医療、更には在宅医療の分野に、現行以上に徹底強化を図ったらどうか、という意見である。 育児環境に“小学1年生の壁”というものがあるようだが、それらに十分対応し、労働環境の整備、改善を図れば、十分取り組めるはずである。 今、診療所は、在宅医療をする、しないで大きく二分化されつつある。 「在宅医療支援診療所」となれば「24時間365日対応」が義務付けられるが、既に全国で1万2千軒が登録を済ませた。 1人の医師でこの義務をこなしきるのはどだい無理なはなしで、他院とグループを組んで連携プレーする方法等が考えられている。 だが、自院内で複数医師により円滑な運営ができればそれにこしたことはない。そこで若手女医に目が向き、訪問診療の方を手助けしてもらえれば、というわけだ。 幸い女医は在宅診療との相性がすこぶる良いとの評価があり、生活を診る必要性のある仕事柄、極めて適合性があるとされる。 子育て中の女医たちというかたまりを一つの社会資源としてみれば、これを十二分に有効活用できるのであれば、大変な国家的戦力となりうる。 訪問診療という労働体制であれば、外来診療より日程や時間割変更等の融通がききやすく、子育て女医には大変都合がよい。 女子医学生がどんどん増え、その分男子が少なくなっていく現象には、医科大学経営陣としては、大変頭を痛めているようだ。だが、卒業した女医が、こうして社会的に大いに役立っているとなれば、これも重要な意義のある生き方として、重く認めてあげてもよいであろう。
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