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油ぎったビフテキなど、動物性脂肪の豊富な食事を大量に摂り続けていると、狭心症に代表される心血管疾患に罹患しやすくなることは十二分に証明されている。 だが、マサイ族にこの方程式は通用しなかった。現代の強力なエビデンス(科学的根拠)に全くすぐわず、困った研究者たちは、未知の遺伝的要因によって守られているのだろう、として済ませてきた。 だが、このほど詳細なライフスタイルの分析により、一般的に通用している理論同様、マサイ族がいくらたらふく動物性脂肪食を常用していようとも、心血管疾患発症しないのは、並外れた身体活動によるものだということが証明された(スウェーデン・カロリンスカ研究所)。 その豊富な運動量は、一日基礎代謝カロリーを、更に2500キロカロリーも上回っていることが解った。 その結果が、あのマサイの細いからだを作り、血圧も、血中脂質値も共に低く、健康そのものの状態を維持しているのである。 この研究でマサイの健康体が格別ミステリアスなものでなく、現代科学に裏打ちされたものであることが解り、やれやれである。 そこで、この豊富な運動量とはどの程度のものなのか大変気になる。 判明したのは、マサイと同等レベルのエネルギーを消費するには、一日20㎞、つまり、毎日のように4~5時間のウォーキングをこなしていなければならない勘定となる。 今、アメリカでは、多くの国民が、日常的に動物性脂肪食を摂り、その過半数が過体重、或いは肥満で苦しんでいる。 そんなアメリカの将来像として、ジョンズホプキンス大・公衆衛生学研究グループから、30年後の世紀末的肥満状態を示す実にショッキングな数字が発表された。 アメリカ成人の約86%が、過体重(BMI25~30未満)、又は肥満(BMI30以上)となり、関連する高血圧や心疾患の医療費が、推計約1兆ドル(百兆円)にのぼるというのである。 これがもし推計通りとなれば、国民は総不健康状態で国家は滅亡に向けまっしぐらだ。 関係者は総力をあげて画期的プログラムを早急に策定し、大危機を回避しなければならない。はたして国の中枢はどうのような手に打ってでるのか、大変なみものである。
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