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セックスを快楽的に扱う分には、トコトン話は盛り上がるが、こと性病と話が暗い方向になると、とたんに場はしらける。 社会的風潮として、病としての性には、はっきり遠ざかろうする雰囲気が生まれる。それなのに、実態としての性病罹患が、今とんでもない状況に陥っている。 ズバリ、いまやハイティーン世代の2人に1人がHPV(ヒューマン・パピローマ・ウイルス)といわれる性病の感染者なのだ。 この感染は、困ったことに無症候・無自覚という特性があるため、適切な対応が遅れがちとなり、子宮頸癌へ発展するリスクをもつ。そうなると、母体健康もさることながら、当然のこと少子化問題等と云っている段階ではなくなる。 ハイティーンに20代、30代を含めた若年女性に於いては、いまでは、乳癌よりも子宮頸癌の方が上回ることとなり、死亡統計で第一位を占めるに至っている。 性病については、かっては梅毒と淋病が2大感染症として君臨していた。だが、それらが抗菌薬による化学療法で大きく影を潜め、かわりに、クラミジア・HPV・エイズの新世代3大性感染症が一気に台頭してきた。性生活を宿命とする人類を大いに悩ませているのである。 この中で、クラミジアの2倍以上にもふくれ上がったHPVが、どうしたことか社会的にあまりにも軽視され過ぎている現況がある。 生殖年代の女性に、これほど多くの罹患者を発生させた性感染症は他に例をみない。わが国の公衆衛生学的大問題・国家課題と云い切っても少しも過言ではないのである。 そこで海外の状況も気になるところだが、日本ほどひどい状況ではないにもかかわらず、欧米諸国では、公衆衛生上の問題としてしっかりとらえ、若年女性に対する罹患スクリーニング、更には、細胞診検査を一般化し対策に当っている。 ワクチンによる予防対策まで積極的に実施しており、実にうらやましい限りだ。 わが国は、ようやく検討課題に取り上げたものの、肝心の若年女性自身の認識があまりにも不十分すぎて、検診率がたったの5%と実に悲しい状況。 こうなっては、行政、学会等関係者総動員態勢で現状を打開する大啓蒙活動を図るしか手がないのかも。
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