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糖尿病は豊かな国の副産物、というイメージが強かったが、今では決してそんなことはなくなった。 最近開催された世界糖尿病大会では、次のような近未来予測を発表した。「2025年には世界中の7割の糖尿病患者がアジア地域に集中する」と。 アジアは途上国といえども、昨今その口に入るものは高カロリー・高脂肪の食材にとってかわっており、併せて車の利用度も急速に高まっている。 コメ中心の食生活が崩れ、一日中肉体労働にあけくれた身体活動性も激減し、そのライフスタイルは狩猟民族そのもの。昔から染み付いているアジア人体内機構とはまるでミスマッチ状態。 そこで発生する医学面での最大の問題点はインスリンの分泌能に関してだ。本来、アジア人に大量のインスリン分泌は必要としなかった。実際、欧米人の半量程度しか分泌能力はもちあわせておらず、欧米化生活で糖尿病に陥るのは火を見るより明らかなのである。 体格指数BMIが30以上の肥満者が、日本人では3%台、アメリカ人では30%以上。それでいて両国の糖尿病罹患率はほぼ一緒。そこでメタボリックSでいう内臓脂肪のつき方が指摘される。日本人のウエスト85センチがアメリカ人の102センチに相当する危険性ということである。日本人は小太りの段階から肥満傾向に十分配慮し、糖尿病等の発症を抑える意識を持たねばならない。 もともとインスリン分泌能が低いアジア人が肥満体になると、ますます機能が衰え糖尿病へまっしぐらということであるからよくよくライフスタイルの悪化には気をつけたいものである。 世界糖尿病大会では、20年前に現在の糖尿病患者数を3千万人と予測したが、大きなギャップの生じたことを発表した。実際は、なんと8倍、2億4千万人強にふくれ上っていた。原因は発展途上国に集中発生した爆発的増加である。 低所得国の経済的発展が、ほんの1,2世代の間に食事・運動習慣を急速に変化させ、一気に糖尿病を増やしてしまった。そして今、働き盛りの患者による甚大な経済的損失、社会的悪影響が計り知れない脅威を与えようとしている。 現在、日本人の糖尿病患者は、予備群を入れると2千万人と予測されている。大変な事態に陥っているが、予防は実に簡単。農耕民族らしい生活に戻し、それに徹すれば済むこと。単純に昔に帰ればよいだけ。 だが、方向性は理解できても実行するとなるとなかなか。ナマの人間のか弱さが問題解決の前面に大きく立ちはだかる。
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