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今春、アメリカで9つもの学会が合同で、日常行われている多くの臨床検査項目を大々的に見直し、不必要だと思われるものを多数リストアップし公表した。 その中には、我が国でも毎日のように当然の如く実施されている検査が多くあり、医療当事者はもちろんのこと、我々患者サイドとしても、賢い対応・防衛能力が求められることとなった。 例えば「急性腰痛」時の検査対応。 「それでは、まずレントゲンを撮ってみましょう」というのが、ごく普通にみられる初診風景だが、今回アメリカの内科学会等からの勧告では「レントゲンなどの画像検査は、6週間様子をみて、必要性を十分見極めてから」と、悠然たるもの。 実際、世界各国の定めている腰痛診療ガイドラインでは、初診時にルーチンワークとしての画像検査は推奨していない。日本でも、最近ようやくこうした方向性が認識されだし、遅ればせながらガイドライン改善の可能性が見えてきたところである。 もちろん、患者に特定の異常所見がないことを見極めた上で、少なくとも1か月間は薬剤等による保存的治療でよいということだから、医師の技量、初診時判断能力に十分信頼できるようなら、その方向を重要視すべきであろう。 更に、アメリカの勧告では、非ステロイド性抗炎剤はあまり使用せず、基本的にはアセトアミノフェンなどの鎮痛薬をすすめ、安全性、有効性を十分保証している。 日本では、現在アセトアミノフェンの使用は比較的少ない状況にあるが、昨年、諸外国同様に1日最大4、000mgで大幅増量の処方が可能となったので、今後大きく見直しされることが期待される。 更には、小児の虫垂炎の疑いにCTは優先せず、まずエコー診断を、と勧告している。被曝回避、費用対効果等が、その大きな理由である。 最近は、CTやMRI、PETなど先端検査機器を安易に活用する高額なケースが目立っている。 金銭的負担もさることながら、これらは身体的にも精神的にも大きな負担を及ぼしかねない。この機会に大きく見直すことも必要であろう。
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