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じっとしていても熱中症でおかしくなる人がいる反面、大汗をタラタラ流して右に左に走り回っていても平気の平左というスポーツマンのスタミナはまことに恐れ入る。実はそこには急速に進化したスポーツ医学の支えがある。 「たるんどる!水など飲むな!」。昔は実に危険な精神論的指導が横行した。その後「水分は十分摂れ」に変わり、それも今では水は水でもミネラルたっぷりのスポーツ飲料がすすめられる。 市販のスポーツ飲料は、概ね等張に調整されていて体に実に親和性がよく、糖質、ミネラル、ビタミン類がバランスよく配合されている。 マラソン選手が実際によく利用する飲料は、ポカリスエット、アミノバイタル等の市販品だったり、無糖類のバイオ茶や、紅茶に糖質を加えたりした、いわゆるスペシャルドリンクだ。 お陰で、昔よりはるかに過酷な条件下で厳しいスポーツに取り組んでいる割には、水分摂取不足でバタンキューという重篤例はめったに見かけなくなった。 体力消耗がもっとも激しいスポーツといえば、アイアンマンレースということになろうが、7年前のニュージーランドでのレースでは、ゴールした参加者の18%に低ナトリウム血症が認められた。この症状としては、悪心、嘔吐、頭痛、混迷等に加え呼吸障害も現れ、死に至る重篤例も知られている。 レースタイムが長いという点では、マラソンにも細かい注意が向けられる。運動の強度、時間を考慮し、通常15分毎に150~200mlの水分と、適度な炭水化物やミネラルの補給が必要とされ、米国スポーツ医学会の指針にもしっかり明記されている。 当然、発汗量や汗の組成等個人差の把握は必要で、運動前後の体重チェックは非常に大切。それによって自分自身の水分補給の必要量を確認する。もし運動後体重増加となれば水分の摂り過ぎ、低ナトリウム血症のリスクが高まる。 幸い低ナトリウム血症については、比較的欧米人に多く日本人には少ないという。塩分摂取の違いと見られているがあくまでも個人差、降圧剤の服用があれば低ナトリウム血症のリスクは一気に高まる。 マラソン競技では、飲水後のカップは路上に捨てられ、残量を厳密にははかれない。多くの選手は1口2口飲む程度でせいぜい100ml程度の飲水量と専門家は見ている。 アテネオリンピックの金メダリスト野口みずき選手の給水ボトルは二重方式になっていて、一方には体にかける冷水を約350ml、そしてもう一方には、約120mlのスポーツドリンクが含まれていたという。
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