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30年、或いは40年間以上にも及ぶ長いサラリーマン生活のピリオド・定年退職は、人生の大きな節目。日本は、どちらかというと悲哀のイメージの方が強いが、外国では少々様子が違う。「ハッピーリタイア」という言葉もあるし。 最近、フランスで男女サラリーマン1万4千人以上を対象に、退職前後約7年間ずつ合計15年間にわたる健康追跡大規模調査が実地された。結果、定年退職を機に長年のサラリーマン生活で疲れ果てた心身の疲労やうつ症状が、大幅に緩和されることが明確に認められた。 特に、精神的疲労を訴えていた者が、約5分の1に減り、また、身体的疲労についても約4分の1に減少したのである。 さすがに、長年病み続けている慢性疾患については、明らかな好転はみられなかったが、退職によるヤレヤレという安堵感が疲労回復、或いは癒しにつながったことは確かだという。 日本人とて人それぞれ、定年を期に〝日々是休日〟とばかりに、のんびり、気楽にと考える人が当然いるが、これが意外にも危険、余命を大幅に短縮させる、という警告データが最近発表されたので注意が肝要である。 著名な心理学者・カリフォルニア大・フリードマン教授ほかの画期的な研究「性格が長寿の予測因子となるか否か」の成果が次のようにまとめられている。 〈人間はくよくよ悩まず陽気に過ごし、あまり働き過ぎないこと。これが一般に長寿のアドバイスのように受けとめられているが、実際は全くその逆であることが判明した〉というのである。 研究者は、当初は〝当然こうなるはず〟(楽天礼賛)と思いこんでいたことがみごと覆され〈本当に驚いた〉と告白している。 特に意外であったことは〈小児期に最も陽気で最良のユーモアセンスを持ち合せていた人が、あまり陽気ではなく、冗談を言う性格でもない人に比べ、平均的に短命であった〉とする知見である。つまり、〈用心深く粘り強い人ほど、良好な健康状態を維持し長生きをした〉のである。 陽気でノー天気だと、時に健康を危険にさらすような行動を取りやすい。〝楽天的〟は危機的条件下では役に立つが、一般的日常生活ではリスクを招きやすいのだ。 要は「楽天的過ぎはよくない」、一方、「過剰な心配ばかりするのもまたよくない」。毎日、いかに中庸を保って生活できるか、ということである。
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