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うつ病に罹患した者は、初診段階では、自分の不調の原因がいったい何なのか全く気付いていない。気付いていたら、当然最初から精神科へ行くはずである。 よしんば、うっすらとその気配を感じていたとしても、それを否定したい気持ちが強く働いている。 通常は一般の内科に受診し、胃痛や動悸、疼痛等身体的苦痛の数々をとうとうと訴える。必要な検査がくまなく行われるが、苦難の始まりはここからだ。 もしこの時点で、ただ単純に「異常ありません」と簡単につき放すだけの医者なら、サッサと退散すべきである。 器質的異常所見が全く認められなかった場合、通常医師は“うつ病”を疑う。懸命にその方向で患者に説得を図ろうとする。だが、なかなか一筋縄ではいかないのがこの病気の難しいところ。 うつ病は、一生涯7人から10人に1人は罹るといわれ、今や極めてポピュラーな存在となった。とはいえ、いざ自分が、ということになると話は別、すんなりとは受け入れられないのだ。 最近は、一般内科医といえども、うつ病は基本的に守備範囲として捉え、治療ガイドラインも整備されている。なんとか患者の苦痛を取り除いてやろうと努力してくれる。 診断のポイントは、まず患者に希死念慮らしきものがあるかどうかを確かめ、悲観的思考をみてとった場合は、医師はそれなりに熱心にアプローチをしてくるはず。こうなったら患者としても、少しは素直に心を開いてみる必要があろう。 精神的なストレスを洗いざらい打ち明け、医師に話を聞いてもらえたことで喜びを感じ、それだけで多くの症状がぐんと軽快してしまうことがある、とベテラン医師はいう。 軽症うつ病の場合は、さほどの苦労もなくおさまりをみせるのだが、うつ病全体としては、この12年間で2・4倍にも増加している。 一般的に、急性期治療には約3か月間、継続治療には更に3~6か月間要することをしっかり自覚してかかるべきである。 更に、再燃率や再発率が極めて高いという困った性格もある。ちなみに5年で約6割、つまり半数以上が再発し、10年では約8割の再燃が報告されている。 中には一生涯に亘って治療を続けている患者のいることも認識しておくべきである。
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