メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
赤ちゃん男女比率騒動
 
   「男の赤ちゃん比率低下」
ある日、夕刊のトップにこんな見出しが躍った。新生児に占める男児の比率が約30年前から減り続け、その原因として環境悪化の可能性が指摘された。女児に比べ体力の劣る男児が、その影響をモロに受けている、との推測である。
 環境の悪化等を考慮にいれない自然摂理は、男児の方が、女児より5~7%ほど多く世に輩出する仕組みになっている。
 この男児減少という現象は、特に、東京、大阪等の首都圏で目立ち、女児に対する男児の比が1.07倍台から1.04倍台へと低下した。
 男児減少の傾向は、単に日本だけでなく、他の多くの先進国でも見られる。そこで、原因として最も強く疑われている環境悪化に関して、より深く探るため、地域別相違の分析が精力的に進められている。
 一方、アジア・アフリカの一部地域では、逆に、若年男性が12~15%ほど過剰という不可思議な異常事態がみられる。当然、人工的操作が加えられたことが伺える。
 つまり、これは性選択的人工妊娠中絶が行われたことによるものであり、結果、多くの男性が独身のまま過ごすことにつながる。
 社会的受容がなされないまま、この異常は凶悪犯罪を引き起こしたり、更には、いま国際社会を震撼させているテロ行為の温床ともつながる。
 これらの地域では、約20年前からこの種の選択的中絶が積極的に導入・拡大されており、インド、中国の両国だけでも8000万人超の女児が中絶されたと推測されている。
 あり余る男性を前にして、女性側とすれば結婚相手はよりどりみどり。その影響で、貧困・低学歴の男性はなかなか家庭を持てず、社会的身分を得られないまま宙ブラリンの生活を余儀なくされる。
 その集合体は、時に暴力的に組織化され、テロリズムなどへと発展していくのである。
 こうした中絶は絶対許されるものではなく、例えば韓国では、この種の中絶を秘かに実施していたドクターが幾人も医師免許を剥奪され、結果、男女比を正常に戻している。
 一方的な女性の減少は、女性の社会的地位を向上させ、親は娘を欲しがることになる。結果、長期的にみれば、次第に性比率の不均衡は回復されることになる。
 しかし、現在既に成り立ってしまった絶対的多数の男性集団という歪んだ地域の及ぼす悪影響は如何共しがたく、今後20~30年間は最小限の事故発生に留めるべく、全世界がしっかり注視し取組まなくてはならない。

(2008年1月18日掲載)
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難治うつ病に電気刺激
(2008年2月8日掲載)
◆赤ちゃん男女比率騒動
(2008年1月18日掲載)
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(2008年1月11日掲載)