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戦後のベビーブーマー・団塊の世代が、過熱競争をかいくぐり、続々還暦を迎えている。 時は更に進み、2020年頃になると、さまざまな医学的見地から、胃がん発生のピークがくるのではと予測されている。現在、基本的な胃がん検診策はとられているが、このまま格別抜本策がとられなければ、その死亡者数は年々6万人近くに達するとされ、医療費が爆発的に増大、収拾つかなくなると危惧される。 まず、現在実施されている胃がん健診の問題点その第1は、対象年齢。40歳以上となっているが、我が国の実状として、50歳未満の胃がん患者は全体の3%余にすぎず、公的対策型検診としてはふさわしくないと思われる。 問題点第2は、バリウム撮影法がX線被曝の心配も含めて、検査メリットが極めて弱いこと。 今や我が国の胃がんは、その95%以上がピロリ菌感染に基づいて発症するとされているが、奇妙なことに、この感染源を遮断する一次予防策が全くとられていない。二次予防策としてバリウム検診しか行われていないのだ。 その結果、我が国では、30年以上に亘って胃がんによる死亡者数が5万人前後とほとんど変わっていない。対策不在ともいえる膠着状態は、まことに許し難い。 例えば、バリウム法からペプシノーゲン法に切り換えることが強くすすめられ、これにより検索すれば、胃がんを引き起こしやすい胃粘膜かどうかがたやすく判定できる。 このペプシノーゲン法と併せて、胃がんの発生源となる萎縮性胃炎を引き起こすピロリ菌抗体法の両法を、50歳以上の国民全体に適用すれば、極めて意義深い抜本的改善につながるはずである。 そのためには、現在行われている健康増進事業に基づく胃がん検診ではなく、肝炎・肝がん対策と同様に、胃炎・胃がん対策基本法を新たに制定し、その専門機関を設立する必要があると思われる。 これが円滑に運営できれば、胃がんの激減につながり、医療費の大膨張をストップさせることが可能となるであろう。試算によると、50歳以上の約半数が参加すると仮定すれば、 胃がん死者数は6万人から3万人に半減との予測である。
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