メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
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頭痛の空回り
 
   ドラッグストアには、健康に不満を抱く人々が多数訪れるが、その中で最も多いとされているのが頭痛に悩みをかかえる人々。
 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など慢性頭痛にはいろいろあるが、中でも片頭痛は別格。20、30、40代の働き盛りを集中的に狙い苦しめる。
 男女比は1:3.6、女性が男性より3~4倍と圧倒的に多く、繁昌店は結婚適齢期の華やかな女性陣のオンパレード。次から次と訪れては頭痛薬を買い求めていく。
 こうしたお客のほとんどは、時々寝込むことがあるほどの劣悪なQOL環境に喘ぎながらも、専門医による適切な治療を受けないまま、漫然とOTC薬を購入し続ける。
 1か月の半分以上を頭痛に悩まされ、この状態が何か月も続いている人は「薬物乱用頭痛」と診断されることがまず間違いない。
 素人療法で市販の頭痛薬を頻繁に愛用することにより、頭痛が収まるどころか、生活の半分を頭痛に悩まされるという泥沼にはまっている。
 アメリカでは、頭痛専門外来を訪れる患者の半分以上がこのケースに相当するというから、日本人も含めて国際的疾患、現象といえるのでは。
 パターンはいろいろで、ひどい頭痛をたびたび経験、恐怖や不安を抱いている人、発症早期に服用しないと効果が少ないことをたまたま体験していて、頭痛の気配を察知、すぐ服用する人、特に忙しく予防的に服用することに慣れ切ってしまった人などさまざまである。
 漸く専門医に辿り着いて、原因が市販薬の飲み過ぎであることを説明され、乱用を止める方向で指導を受けると、比較的改善に持ちこむことはスムーズ。今までの苦労が何だったのか、新しい明るい生活を取り戻すことができる。
 OTC薬に依存し続ける背景には「どこを受診したらいいのか解らない」とか「受診する時間がない」などがある。結果、片頭痛と解るのに10か所以上の施設を転々とし、平均10年を要している。(厚労省調査)
 実情として、まちの薬局が頭痛専門外来の紹介等、適正に対応するのは至難の業で、ましてや最近登場した登録販売者には極めて荷が重い。
 さらに、インターネットでのOTC薬販売がほぼ解禁となり、対面販売でなくて容易に購入できるようになった。こうした制度改正は、頭痛患者の間違ったセルフメディケーションを助長させることとなり、「薬物乱用頭痛」患者をますます増大させてしまう。

(2014年11月28日掲載)
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(2014年11月28日掲載)
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