|
総合病院の存続を公約に揚げたものの、休止に追いこまれた市長が失職した。 深刻な医師不足で、日本全土医療混乱が続いている。施設丸ごと退陣は免れても、個々の診療科の休止は至る所で発生している。 例えば、鳥取大では救急医全員の辞職が報じられたし、お産で有名な愛育病院が、あまりの過重労働に耐えかね、総合周産期母子医療センターの指定返上を打診し、大きな騒動となった。 産婦人科はもともと最も医療訴訟が多い上に、労働環境の急激な悪化が特に大きく社会問題化しているが、小児、麻酔、救命救急の各科でも次々閉鎖、縮小が続いている。 そこへ外科が新しい火種を飛ばし始めた。現実にある地方では、癌が見つかっても手術が受けられない。イギリスのような1年先なんてことは今のところないが、「最低1か月先」がもう当たり前。 外科混乱の最大の原因は、新規のなり手が急減しているから。最近10年間の20代医師総数はさほど変動していないが、外科系医師は減少、特に一般外科に至っては約3分の1に激減した。 なぜこれほど外科が新人医師に嫌われるのか。本来外科は治療効果が肉眼的に確認でき、“魅力ある科”として人気があったのだが。 外科医の労働環境はとにかく悪すぎる。時に十数時間にも及ぶ立ち続けの執刀が月に何度もある。それでもそれに見合った給与であれば“まあ頑張るか”ということにもなろうが。 それに昨今は、新方式の技術取得も、覚えて当たり前。折角苦労して腕を上げてもペイは上がらない。こうして、不満渦巻く職場実態を、現代の医学生、研修生が避けて通るのは当然。 これまで夢多き中高年医師の自己犠牲で成り立ってきた外科医療もこのままでは尻つぼみだ。高い職人技を要求される外科領域は一人前になるのにゆうに10年以上はかかる。のんびりしてはいられないはず。 「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」なんていう物騒な集まりが、非営利法人により実際設立され記者発表会まで催されている。 外科志望者が10年後ゼロになる推定がたてられたという。とにかく看過はできない重要課題である。
|