未承認薬・適応外薬検討会議で「公知申請に該当」と評価された医薬品に関する情報

第16回(2013年6月19日開催)
一般名:エストラジオール
性腺機能低下症、性腺摘出、または原発性卵巣不全による低エストロゲン症

公知申請が可能と判断された日08/02/2013
部会名薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会

一般名:エストラジオール
販売名:エストラーナテープ 0.72mg
会社名:久光製薬株式会社
効能・効果:
 性腺機能低下症、性腺摘出、または原発性卵巣不全による低エストロゲン症の治療
用法・用量:
 低用量貼付剤として、0.09mg/1枚、0.18mg/1枚、0.36mg/1枚の3種類。小児では低用量0.09mgから開始し、0.18mg、0.36mg 、成人量(0.72mg )へと段階的に増量する。
コメント:
 8月2日の薬事食品衛生審議会医薬品第一部会において、▽久光製薬「エストラーナテープ0.72mg」(一般名=エストラジオール)の性腺機能低下症、性腺摘出又は原発性卵巣不全による低エストロゲン症――について事前評価が行われ、同日付で保険適用が可能となった。
これらの医療上の評価等について検討を行った「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での評価のポイントや、新たに適応追加となる効能への使用上の注意事項等を厚生労働省医薬食品局審査管理課・宮田俊男課長補佐に聞いた。

・評価のポイント
 エストラジオール貼付剤の性腺機能低下症、性腺摘出又は原発性卵巣不全による低エストロゲン症への使用は、▽アメリカで承認されていること▽欧米のガイドラインにおいて、低エストロゲン状態の女性に対しては原則的にエストロゲン製剤を用いたホルモン補充療法が適応とされ、原発性卵巣不全の一つであるターナー症候群に対するエストロゲン貼付剤の使用が推奨されていること▽国内においても、少数例ではあるが、小児患者に対してエストラジオール貼付剤が使用された症例報告があり、安全性及び有効性について特段の問題は認められていないこと――などから、医学薬学上公知と判断した。

・臨床試験・公表論文等の要点
 海外では、ターナー症候群の女性に対するエストラジオール経皮投与の各臨床試験において、ターナー・ステージの発達、子宮サイズの発達、血清中エストラジオールの上昇などが確認されている。
 国内においても、エストロゲン貼付剤の投与により成長率の維持や成長率の改善、思春期のスパートなどが認められた。
 日本産婦人科学会・日本更年期医学会『ホルモン補充療法ガイドライン2009年度版』では、「閉経後などの卵巣機能の低下した女性では、エストロゲン欠落症状やエストロゲンの欠乏に起因する機能障害は程度の差こそあれ必発である。したがってホルモン補充療法を閉経後女性のヘルスケアに対し用いることは、合目的かつ有効な手段になりうることは疑う余地のない事実である」と記載している。

・臨床試験等で見られた主な有害事象
 海外の臨床試験において、適用部位の発赤、凝集因子への感受性(ADPとコラーゲンの血小板への応答)の増大などが見られたが、エストロゲン製剤の投与による新たな安全性上の課題は報告されていない。
 性腺機能低下症、性腺摘出又は原発性卵巣不全による低エストロゲン症に対する本剤による治療は、エストロゲンの欠乏に対して、同年代の健康女性と同程度の生理的なレベルのエストロゲンを補充するものであり、安全性について特段の問題が生じることは想定し難い。ただし、エストロゲンは骨端閉鎖を促すことが知られており、思春期前の小児に対しエストロゲンを大量に投与した場合には低身長となる恐れがあることは注意する必要がある。
 一方、閉経後女性あるいは卵巣摘出後女性に対するホルモン補充療法のリスク評価については、アメリカにおけるWHI試験をはじめとする複数の大規模試験の結果から、子宮内膜がんや乳がん等のリスクがあることが示されている。そのため、同剤の現行の添付文書では、子宮筋腫や子宮内膜症のある患者、乳がん家族素因が強い患者などは〈慎重投与〉とされており、閉経後年齢以降にエストロゲンを投与する場合についても同様の注意が必要と考えられる。

・使用方法
 通常、成人に対しエストラーナテープ0.72mg1枚(エストラジオール0.72mg含有)から開始し、下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2日毎に貼り替え、症状に応じ増減する。小児では、エストラーナテープ0.72mg1/8枚(エストラジオールとして0.09mg含有)から開始し、下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2日毎に貼り替える。その後、1/4枚(エストラジオールとして0.18mg含有)、1/2枚(エストラジオールとして0.36mg含有)、1枚(エストラジオール0.72mg含有)へ段階的に増量する。
 現在、同剤の低用量製剤は開発中となっており、承認されるまでは既製品を裁断して使用することとなる。

・その他留意すべき点
 成人の性腺機能低下症、性腺摘出又は原発性卵巣不全による低エストロゲン症の治療を目的に本剤を使用する場合は、定期的に中止または漸減の判断で行い、最小量での治療を行う必要がある。小児においては、使用後6ヵ月~1年を目処に増量を検討するほか、思春期前の小児に対し卵胞ホルモン剤を長期間にわたり反復投与した場合は、骨端閉鎖が起こり、低身長となるおそれがある。定期的に症状や血中エストラジオール濃度等を確認し、増量や中止または漸減の判断を行う必要がある。
 また、学会のガイドライン等、最新の情報を常にフォローし、適切な使用をお願いしたい。

【関連資料】
審議会06/19/2013 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議/公知申請への該当性に係る検討会議報告書(案)(外部リンク)
審議会08/02/2013 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会における事前評価について
厚労省 公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について(外部リンク)