薬事ニュース社
オピニオン

>>>「温泉と、不祥事と」<<<
 日本人と温泉との関わりは、風土記をはじめ日本書紀や古事記といった古い文献にみる事ができる。恐らくは有史以前からの付き合いになるのだろうが、時代によっては、これを楽しむことのできる人は限られていたようだ。現在では、その効能や心地よさというものを、誰でも楽しむことができるようになった。何ともありがたい時代ではないか。
 残念なことに、最近では白骨温泉の入浴剤投入をはじめとする“温泉偽装問題”が相次いで発覚している。こうした報道に接するにつれ、今では怒りを通り越し、すっかり呆れ果ててしまった御仁も多いのではないだろうか。「こんな馬鹿げた事」が起きてしまった要因にはいくつか考えられるが、当事者の業に対する「責任感」や行為の結果に対する「想像力」の欠如が根底にあるのだろう。
 この手の事例は、何も温泉業界に限った話ではない。現に、我々に馴染みの深い医薬品業界においても「こんな馬鹿げた事」は起こっているのである。シオノケミカルが不正なデータを用いた承認申請を行い、行政処分を受けた。幸いにも、審査段階で不正が発覚したため大事には至らなかったが、生命に直接影響を及ぼす医薬品のことだけに恐ろしい。
 万事、惰性で走り続ければ「責任感」や「想像力」は麻痺してくる。こうした不祥事は、まさにその典型と言えよう。悪しき前例を自ら作らないために、たまには立ち止まり、“本物の”温泉に浸かりに行くのも一手かもしれない。

(2004年9月3日掲載)