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>>>「長期収載品の選定療養化」<<<
 2024年度診療報酬改定での導入が決まった「長期収載品の選定療養化」は、▽後発医薬品の上市後5年以上経過▽後発品への置換え率が50%以上――の長期収載品を対象に、後発品の最高価格帯との価格差の4分の3を保険給付範囲とする仕組みで10月から施行する。
 一方で、医薬品の供給不足問題は依然、改善の気配が見られないという。中医協の審議の過程では、薬剤師会代表委員が、「年が明けても後発品・先発品を問わず、医薬品の供給問題に全く改善の兆しが見られない。新たな限定出荷などの情報が毎週現場にきている」「医薬品の在庫管理、手配、患者への説明、医師への相談、それから入荷後の届出などに追われて業務時間も伸びており、現場ではギリギリの状態が続いている」などとして現場の困窮が続いている実態を吐露。そのうえで、「長期収載品の選定療養化」については、「先日、薬局で患者から選定療養について質問を受け、患者に説明したのだがなかなか理解してもらえず、非常に大変だった。仕組みが複雑で対象となるケースとそうでないケースがあるほか、後発品との価格差や投与日数などで負担金が変わる」と述べ、「国民への十分な周知」の必要を指摘した。
 もちろん、国民、患者への「制度の周知徹底」の重要性は言うまでもない。しかし、制度の円滑な運用の前提となるのは、やはり安定供給体制の回復だ。特に後発品に関しては、大手メーカーの不正試験問題が新たに発覚するなど、供給不足からの脱却は見通せないのが実状。24年度薬価制度改革では、後発医薬品の安定供給確保に向けて、安定供給への貢献度合いに応じて後発品企業を3区分に評価する「企業指標」の導入が決まっているほか、厚労省は4月以降、医薬品の供給不安が生じた場合には供給状況を同省ホームページ上で公表する方針も示している。こうした施策を総動員して、制度運用開始の10月までに供給体制を限りなく正常化に近づけることが、窓口での混乱を避けるためには欠かせないだろう。
(2024年2月16日掲載)