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>>>23年度中間年改定を巡る攻防<<<
 2023年度中間年薬価改定を巡る攻防が活発化している。特に最大の焦点となる対象範囲のあり方について、議論の場となる中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では支払側が、「平均乖離率の0.625倍」として乖離率5%を超える品目を対象にした21年度中間年改定をベースに議論すべきと主張。これに診療側が慎重な姿勢を示す展開が続く。製薬産業界側は「実施の是非も含めて慎重に検討すべき」との持論を繰り返すとともに、「『新薬創出・適応外薬解消等促進加算』の対象品目や『基礎的医薬品』などを対象から外す」といった案も打ち出している。
 自由民主党内でも動きが目立ってきた。自民党の有志議員でつくる「製薬産業政策に関する勉強会」(製薬産業勉強会)は11月24日に加藤勝信厚生労働大臣と面談し、次期中間年改定に向けて「実施の是非も含めて慎重に検討すべき」と主張する提言書を手交。毎年改定による加速度的な薬価下落に伴い、ドラッグラグや必須医薬品の安定供給問題が拡大するとの懸念を示した。橋本岳衆院議員が座長を務める自民党・社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するPT」でも政府への提言を取りまとめる方針だ。
 一方、中間年改定の実施自体は避けられない情勢となってきている。製薬産業勉強会の事務局長を務める福岡資麿事務局長は24日、加藤大臣との面談後に記者団の取材に応じ、「中間年改定を見送るのは簡単な話ではない。乖離の大きな品目を対象にするといった原点に立ち戻り、(21年度中間年改定で基準となった)平均乖離率の0.625倍まで掘り下げられた歪な構造を正すことなどを検討して頂けないか提言した」と説明する。
 福岡事務局長はまた、「中間年改定の方法として正しいのかという話は常にあるが、4大臣合意で決まっているため、『間違っている』と蒸し返すのは簡単ではない。複数の議員が発言していたが、今までは様々な意味で製薬産業界も体力があって、やり繰りしてきたと思うが、安定供給問題などを踏まえても、医薬品を叩くことで対応してきた政策(薬価引き下げで社会保障財源を捻出する)に限界が来ている」との見解も示した。
 すでに政府では、来年度の社会保障費の自然増分を高齢化の伸びの範囲内に収める方針を決めている。年末の予算編成過程では、不足分の財源の捻出方法を巡って政府・与党関係者が奔走するが、その都度に薬価は財源候補のターゲットとされてきた。中間年改定の対象範囲を決める指標となる平均乖離率を示す薬価調査の結果は、まもなく中医協で提示される見通しだ。
(2022年12月2日掲載)