薬事ニュース社
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>>>「トラ」と「らいおん」と二人の「晋」<<<
 私塾・松下村塾を一時主宰していた幕末の士・吉田松陰(寅次郎)は、「狂」を持つことをその門下生に説き、自らは「二十一回猛士」と号した。「狂」は、抑えきれないほどの情熱の保持を意味する。「二十一回猛士」は、「吉田」の字を分解すると「二十一回」という字が隠されていることから、“勇猛”な行動を二十一回起こすとの意志の表明。
 先頃、本邦宰相の任を退いた小泉純一郎前総理も、そんな松陰を尊敬するひとり。様々な意味で「変」が代名詞だったこの“らいおん”総理は在任中、松陰が説く通り、「狂」を持ち、「猛」を幾度か発したと言えるか。
 小泉後継宰相となった安倍晋三総理も、郷里・長州(山口)の先達・松陰を、尊敬する人物に挙げている。さらに安倍総理は、父同様「晋」の一字を松陰門下の高杉晋作から得たというように、高杉も尊敬しているようだ。小泉・安倍旧新宰相の「らいおん・晋三」関係は、両者の尊敬する「トラ(寅)・晋作」の師弟関係とも相関し、歴史の妙として興深い(意図的な相関の喧伝も否めないが)。
 現在、本邦では、米国におけるマイクロソフトやグーグル、デル、アマゾンといった21世紀を牽引する強力で新たな付加価値を持つ企業が、残念ながらほとんど育っていない。あっても、ビジネスモデルや時価総額の差は甚大だ。今後、新世代企業を生み出せるか、既存企業が21世紀仕様に生まれ変われるか、ということは、重要なキーワードになってくるだろう。
 松陰は、新たな世界を開くために「狂」をもって「猛」を発した。それは高杉やその後の元勲らに伝わり、近代国家成立の原動力となった。そんな幕末に生まれた開明思想の「寅・晋」DNAは、「らいおん・晋」に伝わり、これからの時代にふさわしい世界に向けて本邦を導くか否か。
(2006年11月3日掲載)