薬事ニュース社
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>>>医療におけるムダを正しく評価できるか<<<
 英国国民保健サービス(NHS)が使用する医薬品・医療技術等の費用対効果を評価する機関、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、いわゆる「べからず集」(do not do recommendations)のデータベースを持っているという。例えば、「感染の臨床的証拠がない場合は抗生物質の全身投与を提供すべきではない」「睡眠計画を実施したにも関わらず睡眠の問題が続く場合以外に、睡眠治療のための薬理学的介入を用いるべきではない」等々、NICEでは主な臨床実践の20%が患者に何らメリットをもたらさない、ムダであると報告している。
 作業工程上や保安上で必要な「べからず集」の必然性と有効性は分かりやすいが、医療におけるムダを特定する「べからず集」の存在の賛否は判断が難しいところだ。ことに検査に関しては治療の前段階であるだけに、本当に必要なのか疑問を持たれてしまうケースも多いだろう。
 今年の夏、アレルギー性喘息に罹った。診断の際医師は肺結核の可能性を排除するためとしてレントゲン検査を行った。当時はその必要性に疑問を感じたのだが、後にある男性タレントが肺結核にも関わらず診断が遅れ、重篤な状態に陥ったケースがあったことを知り、納得するに至った。NICEのような費用対効果の面を重視した医療の選別は、適正価格で高品質な医療が受けられる可能性が増す一方、質調整生存年などの単純な指標のみで多元的に医療の価値を計ることができるのか、といった議論も呼ぶだろう。ただ参考としてNICEの「べからず集」を精査し、その線引きがどの辺りに置かれているか、分析してみるのも一興かも知れない。
(2014年11月21日掲載)