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>>>正念場を迎える医薬分業<<<
 日本保険薬局協会の漆畑稔顧問は10月2日の講演で、今月末からスタートする行政刷新会議の事業仕分け第3弾において、「調剤報酬の『薬剤服用歴管理指導料』が仕分けの対象になるのは避けられそうもない」との見通しを示した。調剤報酬が仕分けの対象になるという事実自体は、(原稿執筆中の現時点では)まだ噂レベルの域を出ていない。ただ、日本薬剤師会は10月7日の定例会見で、細川律夫厚生労働大臣をはじめとする政務三役に、仕分けからの除外を要望したと発表。明確に"噂"を否定することはしなかった。
 『薬剤服用歴管理指導料』は、患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、効能・効果や副作用などの主な情報を文書などによって提供し、服用に際して必要な説明や指導を行った場合に30点が算定できる。08年度診療報酬改定において、薬剤服用歴管理料(当時22点)と服薬指導加算(同22点)を統合して新設された。この加算が、会計検査院が担当する第3弾事業仕分けの「特別会計仕分け」の対象になるというのだ。
 漆畑顧問によれば、この加算制度については多くの薬局が、会計検査院の個別指導で不正請求の対象とされており、「不正請求の頻度が高いという不名誉なお墨付きまで付いている」という。また、30点という点数自体は高くないが、ほとんどの薬局が算定していることから、「7億枚の処方せんが発行されていれば、2000億円近い金額になり、薬局の経営に与える被害は甚大」と説明。さらに、「(服薬指導が)薬局の義務的行為であることを踏まえ、会計検査院としては廃止したい考えを持っているようだ」と危機感を募らせる。
 服薬指導が薬局の「責務」であることは、すでに事実化している。事業仕分けは公開で行われるため、そこでの議論が国民に知れ渡ることは避けられない。漆畑顧問は、『薬剤服用歴管理指導料』を「医薬分業の推進に向けた御旗」との言葉で表現するが、もしも、服薬指導を旨とするこの加算が、仕分けの対象になって「廃止」と裁定されれば、再び「分業否定論」にまで議論の流れが及ぶ可能性もある。
(2010年10月22日掲載)