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>>>宇宙のロマンと新薬開発<<<
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3年後の18年度を目処に、日本で初めて月面着陸する探査機「SLIM」を打ち上げる計画を明らかにした。旧ソビエト連邦の「ルナ2号」が1959年に世界初の月面着陸を成功させてから遅れること約60年。成功すれば旧ソ連、米国、中国に続く4番目となる。
 日本の宇宙技術で代表的な例を挙げると03年に打ち上げられた小惑星探査機「はやかわ」だろう。05年に小惑星「イトカワ」に着陸し、地表の物質を採取した後、10年に地球へ帰還するという世界初の大偉業を成し遂げたことは記憶に新しい。これだけの技術力を持ちながら月面着陸では遅れを取っていることに、素人目線で考えると違和感を覚える。簡単には語ることのできない事情があったのだろうが、挑戦を決めたのであれば日本発のロケットが月に降り立つ光景をぜひ見せていただきたい。
 話は変わって、医薬品の研究開発を巡っては長らく問題視されてきたドラッグ・ラグの解消が進み、これからは日本発の新薬開発を推し進めるために厚生労働省が本腰を入れ始めた。政府の「日本再興戦略」で医療分野を成長産業に位置づけたことなどを受け、昨年には「先駆けパッケージ戦略」を策定。その重点施策として「先駆け審査指定制度」と「未承認薬迅速実用化スキーム」を盛り込んだ。月への挑戦に負けることなく、完治に手が届かない疾患の克服に向けた新薬の登場に期待したい。
(2015年5月1日掲載)