薬事ニュース社
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>>>小児がんのドラッグラグ<<<
 欧米に比べ日本では小児がんの新薬開発が進んでおらず、ドラッグラグの拡大が懸念されている。特に米国では2017年にがん標的治療薬を開発する企業に対し、小児用の開発を義務付ける法律(RACE)が成立し、小児がんの薬剤開発が飛躍的に向上しているという。
 欧米同様の小児がん薬剤の研究開発の促進などを目指し、政策提言などを行うことを目的に設立された「小児がん対策国民会議」は、設立1周年を記念したシンポジウムで、「(世界から)取り残される危機感は非常に強い」と訴える。この要因として、「現在、海外で開発されているものの、日本では開発されていない薬剤の66%が日本法人を有さない新興バイオベンチャーで、日本と接点を持つ術がない」「日本における小児がんのビジネスの予見性が説明できない」「中国では『臨床至急ニーズに応じる海外新薬』の審査において、民族的要因の差異がないと判断すれば、中国での臨床試験がなくても承認申請が可能」などを挙げた。同国民会議の薬剤開発推進ワーキンググループ座長で、国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科の科長などを務める小川千登世氏は、「海外のバイオベンチャーから見ると、日本を通り越して中国でビジネスを行った方が魅力的ということになってしまう」と指摘。「我々も海外ベンチャーとのコンタクト活動などを進めているが、世界から取り残される危機感は非常に強い」とし、問題の解消に向け「従来の制度の延長線上ではなく、抜本的な制度改革が必要だ」と強調した。
(2022年8月26日掲載)