薬事ニュース社
オピニオン

>>>「ドラッグラグ」だけが「格差」ではない<<<
 3月22日に告示された統一地方選挙を皮切りに、夏の参議院議員選挙まで、日本列島は政冶の季節に突入する。医療制改革の帰趨をも左右する重要な選挙の、最大の争点のひとつは「格差是正」。富裕層と貧困層の「格差」が拡大し、「一億総中流」といわれたのも今は昔、中間層から脱落する人々も増加の一途をたどり、しかも一旦、挫折を余儀なくされると再起を図ろうにもなかなかその機会には恵まれず、ずるずると「格差」が固定化される――とまあ、これが一般に「格差社会」と言われるものの図式だが、こちら医薬品業界で「格差」といえば欧米と日本での新薬承認時期の「格差」、いわゆる「ドラッグラグ」ということになろう。
 「イノベーションに貢献する産業」の一番手として、安倍総理じきじきのご指名を受け、いまや「ドラッグラグ解消」は政府挙げての大命題。経済財政諮問会議では、民間議員が「申請価格方式」による薬価算定を提案するなど、製薬産業界の要望は、産業の外側の人々にも一定の理解を得られつつある。このこと自体は製薬産業にとって大変喜ばしいことに違いない。他方、同日の諮問会議では、厚労省が将来的に後発品市場シェア30%を目指すという数値目標も公表した。つまり、画期的新薬創出の支援は、後発品使用促進とワンセットであるとの方針が、より鮮明に打ち出されたわけだ。では、画期的新薬を続々と生み出すほどほどの企業体力もなく、さりとて後発品メーカーでもない、数多の国内製薬企業はどこに存在意義を見出すか。恐らくは他産業に比べ恵まれていた製薬産業にも、「格差社会」の影は容赦なく迫っている。
(2007年3月30日掲載)