薬事ニュース社
オピニオン

>>>診療報酬改定と平均寿命に相関関係はありやなしや<<<
 なかなか興味深い調査結果である。芥川賞受賞作家は、候補に挙がりながら落選した作家よりも平均寿命が長く、逆に直木賞では、受賞者のほうが、落選者よりも短命の傾向にあるという。理由に関しては、芥川賞はいわゆる純文学の新人作家に贈られるため、賞を逃すことで、その後の(収入面も含めた)生活環境に影響を与えている可能性が、一方、大衆文学作品に贈られる直木賞は、すでにある程度実績や知名度のある作家が対象であり、受賞による仕事量の増加等が、かえって健康に悪影響を及ぼしているのではないか、などとした推測が付されている。
 なるほど、確かに島田雅彦はあまり頑強には見えないけれど、村上春樹はいたって健康そうだ。もっとも、村上龍や辺見庸はマッチョだし、藤沢周に花村萬月といった強持てもいる。翻って、田中慎弥や堀江敏幸は微妙にひ弱そう。ましてや西村賢太にいたってはかなりきわどい感じがする。なかには町田康みたいにストレスなど無縁そうな人もいるにはいるが……考えだすと罰当たりな妄想は際限なく広がる。そういえば過日、69歳で亡くなった車谷長吉は芥川賞落選後に直木賞を受賞しているが、自身が落選した時の受賞者である保坂和志を怨むあまり、わら人形で呪詛したと作品に記している。むろん小説のなかのこととて真偽のほどは定かではないが。(以上、敬称略)
 ストレスという点でいえば、医療界でも最前線で医療を担う現場の医師は過酷な労働環境に置かれている。医師だけではない。製薬企業の社員だって、研究開発からMRまで、かなりの激務をこなしているし、2年に1度の薬価改定年には、各メーカーの薬価担当者も、中医協の議論に神経をすり減らしていることだろう。ましてや毎年改定ということにでもなれば……薬価担当としては考えたくもないところか。
 さて、「医者の不養生」という言葉もある。診療報酬改定率と平均寿命に相関関係があるかどうかは知らないが、国民の健康を担う業界に身を置く人間として、(医療費削減の観点も含め)自身の健康にも留意したいものである。
(2015年12月4日掲載)