薬事ニュース社
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>>>欧州に見る健康と財政の駆引き<<<
 今年9月、中欧のハンガリーで塩分・糖分の高い食品に課税する通称「ポテトチップス税」が施行、また10月には北欧デンマークで、飽和脂肪酸を含む食品に税金が課せられる「脂肪税」が導入された。ハンガリーは何故か脳血管系疾患、循環器系疾患など様々な疾患での死亡率がOECD加盟国中いずれもトップクラスで肥満の割合が高く、食事も味付けのヘヴィーな煮込み料理が多かった印象。ハンガリーに限らず、ゲルマン諸国やその周辺国で食事を頼むと、皿の半分以上がフライドポテトで占められることがままあるのだが、日本に比べてヘルシーから程遠い食生活を営んでいるのは確かだ。対してデンマークは国民幸福度の高い福祉大国として有名だが、意外にも平均寿命ではベスト20から漏れているのだった。デンマークの国民食「スモーブロー」はバター付きパンという意味で、脂肪分は寒い北欧では必須の食品なのである。
 こうして財政危機の苦境の中、食習慣改善と税収増の二兎を追う政策で、健康増進~医療費抑制にも躍起になっている欧州であるが、域内最大の国ドイツで今年から薬の価格設定と償還評価に関わる法律「AMNOG」が改正され、製薬企業は新薬発売12カ月以内にベネフィットのエビデンスを提出し、その価値をアピールしなければならなくなった。さもなければ保険償還リストから外されるのだが、利便性を示すデータを提出しても、既存薬との比較によるメリットの格付け評価が下され、場合によっては予定していたものより低い新価格が提示される。格付けを行うドイツの医療評価機構・IQWIGのサイトを見ると、この3カ月間で糖尿病薬、抗血小板薬、高脂血症治療薬などが俎上に上がっているが、いずれも厳しい評価を下されている。四方八方からの締め付けが厳しくなる昨今の欧州だ。
(2011年10月28日掲載)