薬事ニュース社
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>>>医療療養病床の病院が抱えている問題<<<
 この7月から医療療養病床を持つ病院の入院基本料が、患者の医療の必要度、生活の自立度に応じて5段階に設定された。最も安いのは手間のかからない患者で7400円。従来は患者の手間がかかるかからないに関係なく、一律1万2090円だっただけに、4500円以上引下げられることになった手間がかからない患者を多く抱える病院からは「経営の危機」と、今なお嘆きや怒りの声が絶えない。
 以前、とある講演会で当時の厚労省幹部が興味深い話を明かしていた。「これが決まったら、600床の療養病床を持つ病院のオーナーから、『5000万円の赤字になる。どうしてくれる』と文句を言われた。私は文句を言ってきた病院のオーナーにいつも聞く質問がある。乗っている車の車種だ。そのオーナーに聞いてみたら、返ってきたのはどれも名の通った高級車ばかり。だから『5000万円も儲かっていたんですね』と切り返した。相手は黙ってしまった」と。
 しかし、この病院のオーナーがご立腹の背景には、高級車に乗れる乗れないの話だけではなく、実はもっと深刻な内情がある。同幹部が別の病院のオーナーに聞いたところ、今まで手間のかからない患者を1日入院させるだけで1.2万円余儲けてきたことに気を良くし、さらに利益をあげようと、銀行から借金して増改築の先行投資を行っている矢先に今回の引下げとなったため、借金の返済計画が狂って慌てているという。文句を言っている病院の多くはこうした問題を多かれ少なかれ抱えているというのだ。
 医療法第7条では病院の営利経営の追求を禁じている。数年前、国が導入しようとした病院経営の株式会社化に対して病院側は、この条文を盾に理論武装をしていたが、今となっては犬の遠吠えと揶揄されても仕方ない。
(2006年7月21日掲載)