薬事ニュース社
オピニオン

>>>患者会と「患者申出療養」<<<
 月1回の患者会インタビューを連載し始めてから、早いもので1年が経過した。患者の立場から治療に関する生の声を聞かせて頂けるだけでなく、行政や業界団体とは違う視点の政策提言もあり、勉強になることが多い。もちろん辛い経験を話されることもあるので、緊張感を持って取材に望まなければならない。
 最近のインタビューでは「患者申出療養」が話題になることが多くなった。ご存知の方も多いだろうが「患者申出療養」は患者と医師の合意を前提に一定の条件を満たした国内未承認薬などについて、原則的に保険外併用療養を可能とする制度で、中医協が9月中の取りまとめを目指して議論している。患者からの要望で未承認薬を使えるようにするという意味では評価されるべきだが、患者会からは制度を不安視する声が多い。
 特に課題に挙げられるのは、制度の対象となった医薬品について「保険収載を前提にする」という点だ。同様に保険外併用療養の1つであり、未承認薬を用いる「先進医療B」では評価に必要な実施期間や症例数、データの解析方法などに関する厳格なプロトコール作成が求められる。同レベルの基準をクリアしたデータを「患者申出療養」で集められるか。医療の格差を生じさせないためにも保険収載の遅れは避けるべきだが、安全性・有効性の確認は必須だ。適切に医薬品を評価した上で迅速に保険収載するという難題を乗り越えた制度となることを期待したい。
(2015年8月28日掲載)