薬事ニュース社
オピニオン

>>>採算性で計られる社会保障<<<
 先日、ある学会で病院関係 5 団体のトップと日本医師会会長が演者として参加するシンポジウムがあった。やはりと言うか、医療機関経営への株式会社参入や混合診療といった医療制度改革に対し「経済的観点からの改革」と批判、医療を担う立場として「断固反対」という姿勢が打ち出された。
 こうした医療関係者の声は、内閣総理大臣・小泉の誕生以後、抵抗勢力の単なるエゴとして一蹴されてきた。エゴかどうかの判断は識者の判断にまかせるが、これらの背景には、医療や保険、年金といった社会保障費が、国家財政の極めてマクロ的な視点が、政策決定の上で重要視されるようになったことを意味している。
 目下、社会保障費は抑制傾向にある。国家財政の厳しい状況を考慮すると、「医療の無駄を無くす」「皆保険の堅持」といった様々な名目で、社会保障費のスリム化を図る必要性についてはある程度理解できる。ただ、採算性のみを重要視するあまり、社会保障軽視という事態に陥ってやしないかということが気に懸かってならない。
 民間企業が、儲からないことに手を出さないというのは基本中の基本。しかしそれと同じように、日本という国家が採算性を理由に社会保障を投げ出してしまったら、一体誰が日本国民の安全を担保してくれるのだろうか。医療、年金等、これから進められる改革は誰がために行うのか、国は明確に示して欲しい。

(2004年7月16日掲載)