薬事ニュース社
オピニオン

>>>倍速視聴もアリ<<<
 映画やドラマを1.5倍速や2倍速で視聴をしたり、もしくはつまらないと感じるシーンを飛ばして観るのが、若者では当たり前になっているという。個人的には早送りで観る習慣がなく、セリフの間合いや登場人物の細かい心理描写などが分からないし、それで良いのか?と思っていたが、先日「映画を早送りで観る人たち」(光文社新書)を読み、早送りする側の意見にも納得できる部分が大いにあった。
 著者は倍速視聴する背景をいくつか解説していて、まず若者が「タイムパフォーマンス」(タイパ)を非常に重視していると指摘している。「タイパ」は「コストパフォーマンス」(コスパ)の概念を時間に置き換えたもの。つまらない作品はお金や時間の無駄で、周囲の話題に合わせるためにも、できるだけ短時間で効率良く、内容を把握したいという考えがあるという。確かに自分もドラマなどは、1話目が面白くなかったら続けてみることはほとんどないし、なるほどなと思う。
 また経済的な背景にも言及していて、「大学新入生の月平均仕送り額から家賃を除いた生活費」がここ30年で非常に減少していると指摘している。現代ではネット動画配信サービスなどのコンテンツは非常に充実しているが、それらをのんびり観る時間があれば、アルバイトをしなければならないのだ。今後消費の中心となる世代に対して、作り手側も意識を変えなければいけないだろう。色々と考えさせられる一冊だった。
(2023年2月17日掲載)