薬事ニュース社
オピニオン

>>>流通問題への感覚<<<
 少子高齢社会の浸透や新生児の100万人割れなどが毎年のように報道されている。実際、日本の人口減少は著しいスピードで進んでおり、総務省が公表した2022年人口推計(1月確定値)によると、前年1月との比較で約80万人減少していることが発表された。この80万人という数字はかなり強烈であり、具体的には新潟市(約78万人)が毎年無くなっているという単純計算になる。人口減少におけるひとつの大きな問題としては、物流コストの集約化が進むと言われている。限られた配送スタッフのできるだけ効率的な運用を模索することになり、相対的に山間へき地などは都市部との比較で後回しにされかねない。先日、象徴的するようなやり取りに遭遇した。6月25、26日に開催された日本薬剤師会の定時総会で、山間へき地、限界集落といった過疎地域におけるモバイルファーマシー(MP)の運用について、出席代議員が執行部に問うたところ、質問に回答した担当副会長は「不思議な質問」との第一印象を語った。答弁としては災害時に運用されるべきMPを平時から積極的に利用する考えはないという結論である。その一方で、日本チェーンドラッグストア協会の池野隆光会長は、再任の会見時に流通問題が今後顕在化すると強い危機感を訴え、共同物流のあり方を模索すると述べた。組織の背景や取り扱う製品の違いは承知のうえで、実際に過疎地域の住民がこのやり取りを聞いたとき、どちらを頼りにしたいと思うかは明白だろう。地域に対する根本的な感覚の違いが滲んでいた。
(2022年7月8日掲載)