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>>>「名実±0」復活で物語る政局の混乱<<<
 「08年度診療報酬改定は名実ともに±0か」――。08年度改定論議を巡っては、こんな観測が一部で流れている。
 04年度改定で史上初の「±0」を経験しているが、冒頭の「±0」とはその性質が異なる。改定手法といえば、「評価」と「見直し」が慣例。評価=報酬を引上げたい技術があれば、それに要する財源分を、既存技術の見直し=報酬を引下げて財源を浮かし、それを評価したい項目に回す。04年度改定時の「±0」は、診療報酬が全く変わらなかったわけではなく、内部で上げ下げがあり、医療機関の特徴によって影響は明暗を分けた。
 冒頭の台詞にある「±0」とは、「名実ともに」とあるように、診療報酬に全く手をつけないことを意味する。つまり、10年度改定までは現行点数のままでいくということだ。実は同案、04年度改定時に「どうせ±0ならば」と検討されていた。結果、潰れてしまったが、08年度改定まで半年を切った今、当時を知る関係者は「通例なら同案の検討もありうる」と囁く。
 背景に、安倍晋三総理の突然の退任表明による政局の混乱がある。永田町は衆院解散総選挙の時期に戦々恐々としており、「改定どころじゃない」と本音の声がチラホラ。また総選挙となれば、保険者、医療者等関係団体も巻き込まれるため、改定議論に腰を据えられないことも事実。こうしたことを踏まえ、水面下で噂される「名実」付きの「±0」案。ただ、04年度改定では改定議論の主導権が中医協にあったため、そうした手法も実行しようと思えばできたが、今回その主導権は内閣府にある。前出の関係者は「だから実際には無理だろうけど」と笑い、頭の体操に過ぎないことを付け加える。しかしそんな話が復活するほど、政局の混乱が改定議論に波及していることを物語る。
(2007年9月28日掲載)