薬事ニュース社
オピニオン

>>>汚染者負担の原則<<<
 科学技術の発達、社会の効率化、大規模化により、1人の人間が扱うエネルギー量は飛躍的に増加している。輸送手段でも、馬車より自動車、自動車より船舶、航空機と言った具合に、大量のエネルギーを用いて大量輸送を実現しているが、ひとたび事故が起こればその被害もより大きくなる。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故は、その被害、影響の大きさは現代の抱えるリスクの大きさを強烈に見せ付けた。ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベック氏は、朝日新聞のインタビューで「私たちは、着陸するための専用滑走路ができていない飛行機に乗せられ、離陸してしまったようなものです。あるいは、自転車用のブレーキしかついていないジェット機に乗せられたともいえるかもしれない」と今回の事故を評している。われわれは、制御不能なものをわれわれはコントロールできると思い込んでいたというべきか。
 原発事故の賠償については、他の電力会社の協力や政府が貸与する公的資金で捻出するという枠組みだ。1989年にアラスカ沿岸で起きたバルディーズ号原油流出事故では、石油会社は、「汚染者負担の原則」に基づき、莫大な汚染除去費用を負担するとともに、米国政府とアラスカ州に対し10億ドル以上の賠償金を負担することとなった。
 現実問題として、今回の賠償額が東電1社で負担できるかという問題はあるが、東電の過失をどう認定するかという問題もあるだろう。しかし、電気料金値上げや税金投入は、「東電としてここまでやりました。もう鼻血も出ません」と、なってからというのが庶民感情だと思うが。
(2011年5月20日掲載)