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>>>化血研の出荷停止と厚労省<<<
 化学及血清療法研究所(化血研)が承認書と異なる方法で製造を行っていたとして、今年6月から血液製剤が出荷停止となっている。また、影響は同社が製造するワクチンにも波及し、厚生労働省は出荷自粛を要請。一部の品目を除いて現在も出荷されていない状況が続いている。今後は化血研が設置した第三者委員会が事実認定や原因分析、再発防止策まで記載した報告書を取りまとめて11月中に公表する見通しだ。
 一方、出荷停止や自粛中の品目には他社に代替品がない、あるいは化血研がシェアの大半を占めるものが多い。そこで厚労省は血液事業部会や感染症部会を開催して供給不足を回避するための方策を議論し、安全性が確認できた品目に対して例外的出荷、自粛解除といった対応を取っている。命に関わる疾患であれば医薬品を確実に供給するべきだが、投与される患者は複雑に感じるだろう。血液事業部会の委員が承認内容に反する医薬品の出荷を認めざるを得ない状況を「異常事態」「患者の命が人質になっている」と評していたのも納得できる。
 責められるべきは化血研であることは間違いないが、そもそもの承認が妥当だったのか、あるいは化血研へのGMP査察は適切に行われていたのか、厚労省側も責任の一端はあるはずだ。例外的な出荷による対応がしばらくは続く見通しだが、ある意味で違法状態を容認している現状をどのように受け止めているのか、厚労省からの声は未だに聞こえてこない。
(2015年11月27日掲載)