薬事ニュース社
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>>>新たな社会保障の考え方<<<
 2010年度版厚生労働白書では、今後の社会保障政策の方向性として「参加型社会保障(ポジティブ・ウエルフェア)」の概念を打ち出している。「参加型社会保障」とは、「本人の能力を最大限に引き出し、労働市場、地域社会や家庭への参加を促すことを目的」とし、「経済成長の足を引っ張るものではなく、経済成長の基盤を作る未来への投資である」という。失業対策を見ると「参加型社会保障」と従来の社会保障の違いが分かりやすい。「失業しても、一人ひとりの実情に合わせた対応で、トランポリンのように労働市場に復帰できる」ようにするため、「住宅手当・失業手当など生活保障と職業訓練、職業紹介を組み合わせ、必要に応じてパーソナル・サポートを実施する」というのだ。これは、サービスの対象者を単に保護する対象と見ているのではなく、対象者が社会復帰(参加)するアシストをするということだ。あくまでアシストであって主役は本人である。そこで必要なサービスについては、地域で、公、NPOなど新しい公共、企業等が連携して提供していくとしており、税金を消費するだけでなく、社会保障を雇用や生産力アップに繋げる考え方だ。
 医療で言うと、患者の自己決定権を尊重するとともに、責任も負担してもらおうということだ。ここでいう責任とは、地域に根ざした医療サービスを提供するために地域のことは地域で決めるというシステムへの患者(市民)の参加を指す。
 「参加型社会保障」は、社会保障への財政負担を投資と捉え直すと同時に、地方分権、市民の積極的な社会参加を促がすものだが、地域格差の問題もあり、実現への課題は山積だ。
(2010年9月24日掲載)