薬事ニュース社
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>>>薬剤師職能を揺るがす薬歴未記載問題<<<
 「薬剤師職能の根幹を否定する問題だ」――。日本薬剤師会の山本信夫会長は会見で、大手薬局チェーンによる大量の薬剤服用歴の未記載問題について強く批判した。日本病院薬剤師会の川上純一常務理事も臨時総会で会員に対し、「直接関係無いと思うかもしれないが、薬剤師の職能が適切に評価されるよう、より一層取組む必要がある」と訴えた。薬剤師の資質自体を問う事態に発展しかねない問題だけに、全ての薬剤師団体は危機感を募らせている。
 今回の問題は、チェーン薬局に以前に勤務していた薬剤師の内部告発が発端で発覚した。勤務薬剤師の立場からすれば、雇用主である会社の方針に逆らえず、未記載の薬歴を不本意ながら野放しにしていたという側面も指摘されるが、複数の薬局・薬剤師は「雇用主との関係もあるとは思うが、薬剤師としての職務を最優先に考え、しっかりと会社方針に異議を唱えるべきだった」と主張。山本会長も「『薬剤師は本当に仕事をしているのか』という批判に対し、『やっていない』と応じたことになる」と憤る。
 健康被害から患者を守るため、副作用などの情報を聴取して薬歴に記載し、薬学的知見に基づいて服薬指導を行う。今回の薬歴未記載問題は、こうした一連の薬剤師業務を否定するかたちとなり、ある政府関係者は「今回の問題で薬歴を記載しなくても調剤が可能だということを立証したようなもの」と話している。
(2015年3月6日掲載)