薬事ニュース社
オピニオン

>>>「気の持ちよう」を軽視すべきではない<<<
 かつて狭心症患者に対し、「A」という薬の投与に関する多角的な調査をすべくプラセボ対照試験が行われた時のこと。2つの機関は「A」の予想される副作用として「胃腸障害」があることを被験者に説明したが、残り1つの機関ではその情報を知らせなかった。その結果、情報提供を行った2つの機関では、残り1つの機関に比べ胃腸の痛みを訴えた被験者が圧倒的に多く、それが原因で治験を辞退した人数が6倍に上ったという。ネガティブな情報を知った――そのことだけによって、より多くの人が実際に副作用を発現してしまったのだった。まさに「病は気から」を具現化したエピソードである。そういえば高齢の知人は、5~6種類の薬を常時服用しているのだが、「説明書の副作用の欄を見ると、何だか逆に身体に悪いもののような気がして……」と不安を抱いていた。本来、副作用情報は知らせるべき情報なのではあるが、心配性の人には副作用情報さえも悪影響を及ぼすものとなり得るのか。マイナスのプラセボ効果もその影響は侮れない。心理作用がいかにしてフィジカルな影響を及ぼすのか、解明されていない部分がほとんどであろう。しかし多くの人は身をもって「病は気から」の故事が真実であることを知っている。「気」の部分を「ストレス」と読み替えることもできる。たった一言や、ちょっとした振る舞いが人の心に(ひいては身体にまで)影響を及ぼす。日常生活のあらゆる場面においても「気の持ちよう」について配慮するのが、社会に暮らす大人の流儀なのだろう。
(2014年10月10日掲載)