薬事ニュース社
オピニオン

>>>たばこ問題にユーモアを<<<
 来年度も税制改正要望にたばこの増税が盛り込まれていて、喫煙者としては気が重い。出費が増えるから、ではない。今回の理由も、「健康増進」や「欧米並み」といった曖昧かつ使い古された言葉に終始していて、毎度のこと、取り付く島もない気分にさせられるからだ。確かにたばこは体に悪い。しかし国民の健康を気遣うのであれば、他にもするべきことは沢山あるはず。また、税率等を云々するのではなく、単に販売価格を欧米並みにしようとする理屈もよくわからない。日本としての主体性は…? ただ、それぐらい曖昧な言葉を並べた方が、たばこに関心のない多くの人々には、馴染みやすいかもしれない。
 分煙に関する試みが進んだこのご時世でも、嫌煙家対愛煙家(或いは反嫌煙家)の論争が止まないところを見ると、この問題にはおそらく、時代にフィットする正解がないのだろうと思う(多分欧米にも、ない)。エスカレートする殺伐とした貶しあいは、まるで救いのない民族紛争を見るようだが、悲惨なのは双方とも白熱すれば白熱するほど攻撃のみに重きが置かれ、論から人間味なりユーモアが欠如していくことだ。着地点が見えないテーマだからこそ、長い議論にはユーモアが必要という気がするのだが…。筒井康隆氏の『最後の喫煙者』(87年)のような作品が、この時代に再び登場すれば面白いのにと思う。
 そういえばつい最近も氏は、自身のウェブサイト上で、JAL再建問題に対し、「喫煙席を作って新幹線から乗客を奪還」することを薦めていた。実現するかどうかはともかく、氏のユーモアが語りかけるものは多い。
(2009年11月20日掲載)