薬事ニュース社
オピニオン

>>>現場の声は届いているか<<<
 これまでに数々の審議会や検討会を傍聴してきた。数え出したらキリがない。これだけ多くの会議を傍聴していても印象に残るのものはそうないが、つい最近こんなことがあった。それは10月22日の規制改革・民間開放推進会議と厚労省との混合診療解禁の是非を巡る公開討論会だ。
 討論会では、早期解禁を主張する推進会議に対し、厚労省は患者の自己負担が増大する上、有効性・安全性が担保されない等の理由で反対し、特定療養費制度の拡充で対処すべきだと従来の主張を展開した。議論は暗礁に乗り上げ、会場全体から結論は次回持ち越しの雰囲気が漂っていたその時、突然傍聴席から発言を求める手が挙がった。主治医から余命3カ月と宣告されたがん患者のその人は、海外で有効性が認められている抗癌剤を使いたいが国内未承認薬であるために使えない現状を憂い、「患者負担が増えても構わない。最後の頼みの綱となる抗癌剤の一刻も早い混合診療の解禁」を訴えた。どの審議会でもそうだが、傍聴者の発言は本来禁止されている。その人は、またもや結論先送りとなる状況に耐えかね、思わず挙手してしまった自分の非礼を最後に詫びていた。
  「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」のフレーズで一世風靡した映画があった。現場の声に耳を貸さない警察官僚に憤慨した主人公が発した言葉だが、8年もの間結論が出ないまま今日に至っている混合診療問題でも同じことが起きていると痛切に感じる。

(2004年11月19日掲載)