薬事ニュース社
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>>>雪と景気の二面性<<<
 新潟・越後魚沼に生まれた江戸時代後期の文人・鈴木牧之は著作「北越雪譜(ほくえつせっぷ)」の中で、雪のことを「白魔」と呼んだ。今年、日本海側は記録的な豪雪に見舞われ、牧之の生国、新潟では、観測史上最高の約4mの積雪を記録した。被災地の方々には、中越地震からの復興過程での追い討ちに慰めの言葉もないが、不幸中の幸い、天災は日本海側の一定地域だけに被害をとどめている。ただ、これから起こるかもしれない人災は、それではすまない被害を、国民負担という生活者を圧する形で、見舞う可能性がある。
 生活者には本格増税に加え、医療・年金関係費用等の増大が控える。医療関係者にとっても史上2度目、過去最大の診療報酬本体の引下げもあり、「本格的な引下げ時代の幕開け」とみる関係者もいる。もちろん、「問題なし」と見通すむきもあるし、マクロ的視点では大方の企業経営者が景気回復を認識するなど楽観的観測もある。また、生活者の消費傾向も活発化し、金融商品売買では昨年暮れ、東証システムが一時停止するほど、個人トレーダー取引が活発化している。が、特に資産の流れについては、その裏に国債の市中消化額120兆円やその償還など、ぞっとしない現実があり、それがさらなる生活者圧迫の引き金とならないか気にもなる。
 新春早々、悲観論は心苦しいが、今後、好景気感だけでは、痛い目にあいそうな気がするのは杞憂だろうか。古来、“やまとごころ”は「雪」を雅(みやび)と愛でてきた。降雪や景気回復感を素直に喜ぶ気持ちも大事だが、その裏にある「白魔」然とした顔を忘れないことも、今年の自戒としておきたい。
(2006年1月13日掲載)