薬事ニュース社
オピニオン

>>>〝甘かった〟昭和時代<<<
 田宮二郎などが出演している昭和時代のドラマや映画の喫茶店のシーンでよく見られた光景。男が自分のコーヒーに角砂糖を2つ投入、連れの女性に「君は(角砂糖)いくつ? 3つだっけ?」――。今から思えば「甘すぎだろ!」とツッコミを入れたくなるが、昭和時代はそのあたりを標準に考えていたきらいがある。高校時代の初デートの際にも、男2個対女3個の方程式(?)を適用した記憶も。時代は下り、バブル末期頃には結婚する同級生もちらほら。コーヒーに角砂糖3つを定番にしていた女子も、自分の子育てとなるとヘルシー志向から「子供に甘いものは食べさせない」のがトレンドに。90年代後半になると「このお菓子は甘すぎない」が褒め言葉となる。たまに行く外国で、容赦ない甘さの食物や飲料にダメージを受けるほど、砂糖パワーに対する抵抗力がなくなっていることに気付く。そんな折、「脳のエネルギー源は通常ブドウ糖だけ」といった、ある団体の啓発CMを発見、「砂糖は脳のごはん」とのキャッチフレーズで消費アップに力を注いでいる。確かに日本の砂糖年間消費量は低く、ブラジルの約3分の1、EU諸国の約半分(国際砂糖機関年鑑2001年より)で、かなり少ない。推移から見ても、どうやら太平洋戦争直前頃の数値まで減っているそうで、歯科医が従来の虫歯治療から予防や矯正に戦略をシフトしつつあったのも、イトコの姉ちゃんが「子供には甘いおやつは食べさせない」と息巻いていた頃と合致する。ただ気をつけなければいけないのは、日本人には肥満への耐性がなかったという人種的宿命を背負っている点で、それほど肥満でなくても欧米人に比べて糖尿病に罹患しやすい。昔の思い出は甘くなりがちだが、個人的見解では砂糖消費量は現状維持で正解かも。
(2015年2月20日掲載)