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>>>ドーピング禁止物質混入訴訟<<<
 胃炎・胃潰瘍治療薬「エカベトNa顆粒」からドーピング禁止薬物であるアセタゾラミドが検出された問題で、同剤の服用によりドーピング違反とされ、暫定的資格停止処分を受けたレスリング選手が、沢井製薬と陽進堂に対して損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提訴。第1回口頭弁論が11月15日に行われた。
 訴状では、エカベト原薬の製造過程でアセタゾラミドが混入したことなどから、製造物責任等を請求している。これに対し被告側は、混入したアセタゾラミドはごく少量で健康被害を生じる可能性はないとし、製造物責任法(PL法)における欠陥「製造物が通常有すべき安全性を欠いている」には当たらないとの見解だ。争点の一つは「健康被害を起こさない微量のドーピング禁止物質の混入」が欠陥として認められるかにある。
 一方で、レスリング選手には何の過失もない。「エカベト」を試合当日に1回服用しただけで資格停止処分を受け、試合やチーム練習ができなくなった。参加できなかった試合には、東京五輪の選考につながる重要な試合も含まれていたという。PL法には「消費者の生命、身体または財産に損害を与えた場合」とあるが、アスリートにとって練習や試合は「財産」だ。選手は会見で「資格停止の半年は非常につらい思いをした」と述べ、「(製薬企業には)重要な問題だと認識してほしい」と訴えた。今後の審理がどのように進むかはわからないが、心情的には選手の思いに寄り添った形で決着してほしい。
(2019年12月6日掲載)