薬事ニュース社
オピニオン

>>>熊出没<<<
 先日開催された日本糖尿病学会の年次学術集会の取材で、四半世紀ぶりに熊本市を訪れた。強烈な印象を残したのは「熊」の存在だ。一昨年の「ゆるキャラグランプリ」を制覇し、今では全国区の人気者になった“くまモン”が、とにかく街の至る所に出没する。土産物の包装や広告・看板の類は勿論、高層ビルの壁や工事現場の防護壁にまで登場して、ほとんど放し飼い状態。実際のところ、キャラクターの使用については県の許可さえあれば無料なのだそうで、見渡す限りが熊の海なのだった。
 しかし流石は覇者というか、それとも同県出身の小山薫堂氏のプロデュース力によるものなのか、ゆるキャラにありがちな完成度の低さやニッチさはないため、「何となく痛い」雰囲気は皆無。一見垢抜けない土産物でも、包装に御尊顔が覗けば辺り一面に光が降り注ぐし、日赤熊本県支部の広告では、キャラクタービジネス界のメジャーリーガーであるハローキティと並んでも、全く遜色がない。
 学術集会の場でも、新たな血糖管理目標値を設定した「熊本宣言2013」の発表の際には、御姿がスローガンとともに大スクリーンに映し出された。ちなみに氏は「熊本の美味しいものを食べ過ぎて、メタボ体型になったモン」とか何とかで、生活習慣には問題がある。が、大した問題ではないらしい。
 時代とともに日本は狭くなり、地方都市は概して個性を失いつつある。そんな流れに逆らうかのように、ゆるキャラやB級グルメ、御当地アイドルなどが盛り上がる。しかし実際には、さほど功を奏しているわけではない。と、シニカルに捉えていたのだが、今回は少し認識を変えた。熊のお膝元として記憶する熊本も、結構いい。
(2013年6月21日掲載)