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>>>藤原理事長の嘆き<<<
 「PMDAに赴任して一番困っているのは、職員を引き抜かれてしまうことだ」――。こう嘆くのは、PMDA・藤原理事長。先日DIA japanが開催したトークセッションに登壇した際の言葉だ。PMDAは独立行政法人であり、給与体系は決められている。世間一般にはまずまずの給料をもらっているとは思うが、高給の製薬企業に人材を奪われてしまうというのだ。特にPMDAに入って7,8年が経ち、管理職手前に差し掛かる年代の職員は、皆引き抜かれてしまうという。藤原理事長はこの現状を、「いくら育てても全部抜かれてしまうので、砂に水を撒くようなものだ」と表現していた。
 確かに似たような話は、最近あちこちで聞くようになった。キャリア官僚を最も多く輩出する東大でも、最近の学生はほとんど外資系企業に就職するそうだ。激務で知られる官僚と比べると、高給で働きやすいとされる外資系企業に学生が集まるのは仕方がないのかもしれない。
 では官側に人材を集めるためにはどうすれば良いのか。藤原理事長は、「PMDAの質を上げる一番の策は給料の官民格差をなくすことだ」と述べていた。確かに給与体系の官民格差を埋め、働き方を変えていかなくては、なかなか解消しない問題である。特別なスキルを持つ新卒には、1000万円以上の年収を提示する企業が増えている時代だ。ただ、国の財政的においそれと給料を上げるのは厳しいことも事実で、官民格差を解消するのは難しいのが実情だろう。
 また藤原理事長は、「最終的に給料が回収できるような仕組みができている」ため、米国ではFDA、アカデミア、製薬企業に人材が流動していることを付け加え、それがない中でどうやってPMDAの人材を育成していくかは、「頭の痛い問題」と話していた。この「頭の痛い問題」は、PMDAだけでなく、あらゆる行政機関や独立行政法人を悩ませている。
(2020年2月21日掲載)