薬事ニュース社
オピニオン

>>>患者の放置<<<
 このほど、今年9月に大阪で入院していた全盲の糖尿病患者が、入院先の病院職員によって連れ出され、公園に放置されていたことが明らかになった。病院によると、患者は通院が可能な状態で、患者の自宅に住む知人に引き取りを拒否され、放置に至った経緯を説明。患者が約2年間分の入院費用約185万円を滞納していることについても明らかにした。患者は、放置した職員が匿名で救急に連絡したことで無事に保護され、現在は別の病院に入院しているという。
 この出来事は、現在の医療における問題の一端を象徴的に表している。置き去りの行為は決して許されるものではない。しかし、治療費の不払いが医療機関に与える影響は深刻で、不払いに直面した医療機関が取れる対応策はほとんど無い現実をどのようにみるべきか。また、今回のように、退院しても行き場の無い、いわゆる医療難民に対する対応策も整っていないのが実状だ。
 現在、国民医療費が国家財政に与える影響の大きさから、「医療の無駄を無くそう」ということで医療制度改革が進められている。しかし、残念ながら進められている改革の実態は、国の財政的負担を減らすことに傾注しており、治療費不払いや医療難民、医師不足、医療機関の経営難といった、国民や医療機関が問題と感じている事象については放置している。国は、我が国の医療の崩壊を止めるために、この事件の背景についてより真剣に向き合う必要がある。
(2007年11月30日掲載)