薬事ニュース社
オピニオン

>>>「流通・薬価制度に関する有識者検討会」の行方<<<
 「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」の議論がスタートした。革新的新薬の国内での早期上市や医薬品の安定供給といった観点から、医薬品の流通や薬価制度について検討し、来年3月末の取りまとめを目指す。初会合では、かつて中医協・薬価専門部会の座長を長く務めた委員が「多くの審議会では事務局から示されるアジェンダに対して、一つひとつ対応するのが精一杯の状態であり、一度立ち止まって制度全体を鳥瞰し、問題があれば見直しを行うような機会はあまり無い。その意味で有識者検討会の意義は大変大きい」と検討会の意義を強調した。
 製薬産業界の期待も大きい。もっとも、今年6月の組織改正で新設された「医薬産業振興・医療情報審議官」に就任した旧医政局経済課長経験者の城克文氏は、検討会に関して、「製薬産業界とゆっくりと、行ったり来たりの議論をしている時間はない。『イノベーションは重要だ』という主張は昔から分かっている。それでは、どうしてほしいのか。代わりにどのようなことができるのか。はっきりと示していかなければならない」と指摘。そのうえで、議論のポイントとして、産業振興と医療費適正化をいかに両立させるかという難題を挙げ、「医療保険制度は各関係者が持ち寄って少しずつ協力しながら成り立たせている仕組みだ。そのような意味では、費用がかからないようにするのは必要なことだと思う」との見解を示している。
 いわば「身を切る覚悟」を問われた格好の製薬産業側は、検討会開催の前日に製薬協が会見を開き、特許期間中の薬価の維持を目的とする新たな薬価制度の導入等を提案した。ただ、城審議官が暗に求めた「覚悟」までが伝わったかは分からない。城審議官は、「今回のタイミングで提案があれば言って頂きたい。なければ置いていくことになる。創薬やバイオ医薬品、後発医薬品と、それぞれの分野で課題を抱えていると思うが、それらをしっかりと明らかにした上で、ピンポイントで議論できるように、お話しして頂くのが良いのではないか」とも述べている。今後、予定されている業界ヒアリング等で産業界の「覚悟」がどのように示されるのかが注目される。
(2022年9月16日掲載)