薬事ニュース社
オピニオン

>>>「ムダ」についての無駄な考察<<<
 傍聴者が「痛快だ」と喝采を送れば、槍玉に挙げられた官僚は「やり方が乱暴だ」と眉を顰める。もちろん、「政治主導で予算のムダを削る」との触れ込みで始まった行政刷新会議による「事業仕分け」に対する反応である。一般国民がおおむね歓迎の意を表明しているのとは対照的に、仕分けをされる側の官僚をはじめ、関係者は口を揃えて反発するという、まことにわかりやすい構図ができあがっている。先だっての中医協でも、「診療報酬のあり方」に関して1時間足らずの議論で「見直し」との裁定が下ったことに委員から「我々が週2回、毎回3時間以上議論しているのはなんのためなのか」などとした不満が噴出した。いわれてみれば確かにその通りで、厚労省政務官も、制度そのものを仕分けの対象としたことを疑問視するなど、同じ政治に属する側でも賛否両論あるようだ。もっとも、今回の「仕分け」は、財務省が書いたシナリオ通りであることは誰の目にも明らかなわけで、要するに財務省の独り勝ちといったところだろう。
 ところで、これだけ「ムダだムダだ」と連日のように連呼されると、「ムダってなんだろう」と無駄なことを考えてみたくもなる。ハコモノなどはわかりやすいが、こと医療となると、なにがムダかはなかなか見分けにくい。だからといって「えいや」とばかりに一刀両断しては小泉構造改革の二の舞、「医療崩壊」どころか「医療破壊」になりかねない。ここはやはり慎重に検討すべきか、などとムダとわかっていても「無駄足」を踏むのも仕事と割り切らざるを得ない記者としては考えたりもする。民間の仕分け人のなかにもムダなパフォーマンスばかりに熱心な輩も散見されるわけだし。そういえばどこかの夕刊紙が「会場となった国立印刷局市ヶ谷センターこそムダ」とか書いていたっけ。まあ民主党には「こんな見世物はムダだ」といわれないよう気を引き締めてほしいものである。
(2009年11月27日掲載)