薬事ニュース社
オピニオン

>>>毒をもって毒を制す<<<
 毛虫に刺された。朝、新聞を取ろうと郵便受けに手を突っこんだ瞬間、指の付け根に激痛が走った。見ると、黄緑色の毒々しい奴が……スマホで調べると、すぐに犯人が判明した。イラガの幼虫。7月~10月に発生。毒トゲに触れると電撃的な痛みを感じ、皮膚炎を起こす。わりにメジャーな害虫らしく、様々な被害報告が掲載されている。いわく、「刺されると電気が走ったような痛みを感じる」「煙草の火を押し付けられたような痛み」「いつまでもピリピリ痛むのでデンキムシと呼ばれる」「刺されると日本でいちばん痛い虫」などなど。いろいろと情報が氾濫していて、これはこれで面白く、しばし痛みを忘れる。
 肝腎の対処法を検索すると、「まず流水で毒を洗い流し、患部を冷やす」「有毒毛が残っている場合は、セロハンテープなどで取り除く」とあり、痛みがひかない場合は皮膚科を受診するよう勧めている。「痛みや痒みが数週間続く場合もある」などと怖いことも書かれていてびびったが、対処が早かったせいか事なきを得た。まったく、人間にとっては毛虫など迷惑なだけだが、毛虫の側に立てば、毒で武装するのは敵から身を守るための知恵であり仕方あるまい。
 ところで、人間でも言葉の「毒」を吐く人がいる。最近でこそ少なくなったが、いわゆる毒舌家と呼ばれるような人である。果たしてこちらのほうの「毒」には、毛虫の毒とは異なり真の効用が含まれている場合も少なくない。毒をもって毒を制すのたとえもあるが、病気を治療するための薬だって本質的には毒である。良薬は口に苦し。耳に痛い言葉というのは、要するに痛いところを突いているから痛むのである。議会でのヤジなども毒舌の一形態といってよさそうで、急所を的確に突いていれば痛快に響くが、さすがに少子化対策の質問をしている女性議員に「自分が結婚すれば」は不見識に過ぎた。それはともかく毛虫の件に戻ると、見つけたら即、殺虫剤で駆除を、という勧めに従い、過日、大掛かりな毛虫退治を敢行した。これも、毒をもって毒を制す、である。
(2014年8月8日掲載)