薬事ニュース社
オピニオン

>>>来年の話をすると、研究者が笑う?<<<
 キツツキは、なぜ頭痛がしない?
 こんな愛らしい研究を評価したのがイグノーベル賞。ノーベル賞のパロディ版のようなもので、1991年の創設以来、文学、医学、物理学、工学など様々な研究に賞を与えてきた。多少旧聞には属するが、冒頭のテーマは2006年の鳥類学賞を受賞している。こうしたことを大真面目に研究するのもそうだが、それを評価(ときに揶揄)する受け皿があるとはよくしたものだ。中には「ほう」と思わせるものもある。20代後半以降の大人にはまったく聞こえないか、ほとんど気にならない高周波数ノイズ発信装置を、たむろする若者撃退用として店舗に利用した技術と、それを逆手にとって若者向けに、大人の教師には聞こえないケータイ着信音に応用した技術。これは平和賞を受賞している。「ひゃっくり停止」に関する研究を評価した医学賞もあるが、詳細はご自身で。
 人間の歴史をみると、新しい世界の道を見つけ出すのはたいてい、常人からすれば変わり者の少数派。死や飢えのリスクを背負って大海に漕ぎ出す冒険家が地理上の発見や交易の発展をもたらし、妙な装置を組み立てて動かす発明家が工業社会の礎(いしずえ)を築いたように。そしていま我々は、エンジニアや志高い起業家の水先案内で、みえない電脳世界の恩恵をうけつつも、その先の確たる道はみつけられずに、戸惑っているともいえる。そんな時代の潮目に、次の常識への道を見出すのは、イグノーベル的な研究をしている変わり者かもしれない、などと思ってみるのも年の瀬のひと時、忙中閑の心境かと独り思う。
 しかし、研究者の多いこの業界。「来年はあんな変わり者の研究者が新世界への道を見つけ出すかもしれない」などとうそぶけば、鬼より先に、まじめな研究者に笑われるか。
(2006年12月22日掲載)